書くことがないのである。
日記を書いているのだが、「今日歯を磨いた」みたいなことしか書いていない。
そんな自分がブログを書くなんて、どうかしている。
書けるわけがない。
にも関わらず書いているなんて、あきれ果てるのを通り越して、自分を尊敬しそうだ。
ただ、書くことがないのは幸せだと思う。
最近、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』を読んだ。
主人公はバルサといって、短槍使いの凄腕女用心棒である。
王家ににらまれる、裏切られる、薬をもられる、殺されかける、弓刺さる、脇の下えぐれる、狼とびかかってくる、冬の川に気絶しながら流される、もう、とんでもない。
めちゃくちゃ読んでて面白いけど、こんな人生はイヤだ。
心からバルサの人生でよかった、自分ではなく。
バルサは好き。大好きだ。
何かが起こるとする。
事件でもなんでもいい。
たとえば、「ハンドル操作ミスにて畑に落ちる」とか。
クローズアップされ、ニュースになり、たくさんの場所で書かれる。
その瞬間だけエラいことになっているが、その他のほとんどのところで無事だった。
何もない、無事であることは、めちゃくちゃたくさんある。
だから目立たない。
99.999%の生活が無事だったけど、0.001%の有事のことを、いつまでも引きずっていたりする。
有事は目立つからさ。
流行病にかかってしまったら嘆く。一週間苦しみながら怨嗟の声で布団の中を満たす。
その一週間以外の、ほとんどの日は元気に過ごしていた。
その日々に、私は感謝をしていない。
書くことがない。
なんと幸せなことか。
書くことがない日は、幸せをかみしめるといい。
そう思う。
【PR】『守り人シリーズ』
全部読んだあかつきには、家族に「ただいま」を言えることの幸せが、本当の意味で実感できます。
まずはこれから↓
株式会社偕成社『精霊の守り人』著:上橋菜穂子