■ お役をいただき残業
なんのことはない1日だった。
ただ、いつも通り定時ちょっと過ぎに帰れればよかったのだが、それができなかっただけ。
なに、次の日に市内全小中学校の同じ役を持っている職員が集まって会議、ということで、その準備をしていたのだ。
高瀬さん、その役の中でも「長」なもので(ドヤ)。
まぁ偉いわけではないが、エラいこっちゃではある。
輪番で回ってくるような仕事の部類で、地域自治体の「伍長」みたいなもの。我が校に回ってきた役なので、うちの職場なら誰がやってもいいのだ。
だがどうにも高瀬さんが暇そうに見えたのだろう、「高瀬さん、やってくんない」という流れである。
地域の伍長よろしく、誰でもできるのだが、ただただ面倒くさい。面倒くさいが、誰かがやらねば回らない。輪番ってそういう意味だったかしら?
本年度、その役が回ってくることは把握していた。だからこそ去年のうちに校務分掌を話し合い、校内の軽重を見極め調整しながら、その役は他の職員に割り振ることに決まっていたはず。要するにあの手この手を使って他の方に割り振ったはずなのだが、なぜかブーメランのように自分に舞い戻ってくるという。
最終決定は学校長なのでいたしかたない。二つ返事どころか三つ返事で、
「はい、はい、はい、わかりました。」
「いやぁ!助かるよ!高瀬さんなら余裕余裕!」
「ははは、はははは、は~はっはっはぁ」
ってな具合で悪代官的高笑いである。
ということで、帰りが遅くなった。
■ 我が家の家事分掌
ところで我が家にも家事分掌がある。
朝ご飯【オルさん(愛妻)】、風呂掃除【息子ちゃん】、ねこのトイレ朝【娘ちゃん】といった感じだ。
そして私の中で一番重い分掌が「洗濯」である。
洗濯機を回す予約をしておくと、洗濯機の中に家族が衣服をポイポイいれていく。
アイデアホイホイならぬ、イフクポイポイだ。
我が家は最先端の家電を使用しているので二槽式洗濯機ではなく、一槽式全自動洗濯機である。
脱水まで全自動なので、後は干すだけで終わり…というわけではない。ご存じ、干した洗濯物をたたみ、家族個別の籠にしまうまでがお仕事。
洗濯機が干してたたんで、籠にしまうところまでやってくれたら「全自動だ」と言いたいところだが、それは求めすぎというものであろう。感謝して、その点は人力自力でやっている。
■ なんのことはない始まり
日中家にいないので、外に干しっぱなしということができない。
だからいつも部屋干し、が基本である。
ただ今日は違った。
仕事の考え事でもしていたのだろう、なぜか洗濯物を全て外に干したまま仕事に向かった…ような、気がする。
残業後、雨の降る中、車を走らせ家に到着。
駐車し、降車し、ベランダを見上げる。
「奇跡か」
なかった。
いや、これは誰か家族の愛がなせるわざだと思う。きっと入れてくれたのだ。
「ただいま!ありがとう」とオルさんに告げる。
「あぁ、でも、びちゃびちゃに濡れてたけどね、タオルだけ。」
「あ・・・ありがとう」
「なんでタオルだけ外に干してたの?」
「な、なんでだろうね」
被害はタオルだけであった。その他はどうやら部屋干しにしていたらしい。
よかった。しかし、何を外に干したのかも覚えていない状態だったらしい。
気を取り直しタオルを別の場所に干し直して(洗い直す気力はない)、部屋干しで乾いた洗濯物の取り込み作業に入る。
■ 部屋干しタイムリミット
部屋干しの現場が寝室であるから、家族が寝る前に全ての作業を終えなければいけない。タイムリミットがあるのだ。干してあるものをたたんで家族の籠にふりわけ、空いたハンガー&ピンチに予約洗濯が終わった衣類を干す。
残業で遅くなったから、リミットがシビアだ。
なんとか取り込みが終わったところで洗濯機の前にいったとき、唖然とする。
「洗濯機が・・・回っていないだと?」
イルイポイポイされたままの姿で洗濯機という名の彼、いや彼女は佇んでいた。
横目で、
「頼まれてませんけど?私」
と、言ってくるようである。そこで思わず叫んでしまう。
「お、俺が洗濯予約を忘れたというのか!」
家族が犯人ということもある。
洗濯予約をしていても、洗濯物を追加で入れるさい、扉を開けっぱなしにしていると回らない。が、今回に関しては自信がない。何をどこに干したか覚えていないほどの心理状態である。洗濯予約をし忘れていてもおかしくない。
案の定、
「あぁ、しっかり回っていなかったわよ?」
とオルさん。だったら指先一つで回してくれよ!という言葉を飲み込み、
「そっか」
と、自分の指先で彼女の急所「スタートボタン」を押す。
なんなら貫いてしまいたいぐらいの気持ちで、強く、しかし静かに、押した。
が、切羽詰まっていることは忘れてはいけない。全自動洗濯モードの中でも「最速」であるところの「おいそぎ」を選び、20分間での完了を彼女に約束していただく。なんならバケツで水を入れるところまで手伝いたい気分だったが、全自動洗濯機であるところの彼女のプライドを傷つけるわけにもいかない。信じて20分待つことにした。
■ 画期的な発明
待つこと20分。文で書いてしまえば一瞬だが、本当に待つこと20分。
ティ~ティリティ~ティ、ティ~ティリティ~ティ、ティ~リティッティティ~ティティ♪
といういつもの音楽、
「洗濯終わったわよ♪あ・な・た♪」
に聞こえなくもない(いや絶対聞こえない)いつもの音楽で、洗濯完了を告げられる。
洗濯機のフタをあけ、高瀬さんは目を疑った。こんな定番のオチがあっていいのか。
「だれ?ポケットティッシュを洗濯機に入れたのは」
またまた心理状態不安定な自分の可能性もあるからして、強くはいえない。
が、洗濯物を移している最中に犯人が判明した。
娘のズボン、おしりのポケットに、ティッシュなき、ポケットティッシュの袋が入っている。
「あ・・・私だ♪おと~さ~ん、ごめ~~ん♪」
「そっか」
全ての洗濯物にまき散らかされたティッシュが、ものすごく寒く感じる。
こんな話を聞いたことがある。
柔軟剤を多めに入れて、「すすぎ」「脱水」をもう一度するとティッシュは取れる。
最後の神頼みで試みる私であったが、20分後、一つ一つの洗濯物を、八つ当たりのように叩いている男が独り。
頼む、「水にとけるティッシュ」じゃなくて、「水にとけないティッシュ」を発明してくれないか、誰か。
トイレには、絶対流さないと誓うから。
「ティッシュバイバイウォッシュ」なんて洗剤を小○製薬さん、開発してくれないか。
ブログで宣伝すると、誓うから。
知らんけど。