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『僕愛』『君愛』読了レビュー

『僕愛』『君愛』を読み終えました。
『僕愛』とは『僕が愛したすべての君へ』で、
『君愛』とは『君を愛したひとりの僕へ』です。

映画になっているようですね。自分は乙野四方字さんによる原作をあたりました。

【目次】

■ どんな気持ちでエンドロールを迎えたい?

小説は、ジャケ買いというか、あまり色々なレビューを読まずに買うので、前情報は「パラレルワールドを行き来する主人公の2つの物語」ぐらいです。

で、なんとなく『僕愛』から読み始めました。

そうか、この2つの物語、どちらから読むかで感じ方が変わってしまうのですね。

ゲームにも取り返しのつかない要素がありますけど、小説もそうですね。
消せることなら、記憶を消去してでも『君愛』から読んでみたいと思っています。

あぁ、もう私は『僕愛』→『君愛』でのストーリーしか語れないんだ。
『君愛』→『僕愛』も感じてみたかった。

映画のキャッチコピーもこれでしたね。

どんな気持ちでエンドロールを迎えたい?

■ 『僕愛』『君愛』でのパラレルワールド

両方ともに共通している世界観として、人類は並行世界の存在に気づいています。
物語が進むにつれ、主人公の暦(こよみ)たち研究者の努力もあって、科学は進歩し、並行世界を自由に行き来できる世の中になっていきます。

自然ととなりの並行世界に飛んでしまう(パラレルシフト)は、よくあることで、その差違はほぼないに等しく、たとえば朝ご飯がパンかご飯かの違い程度。
シフトした本人も気づかないくらいで、いつのまにか、自然と元の世界にもどってしまいます。

ただ、ごくまれに、かなり遠くの並行世界にシフトしてしまうこともあって、その差は大きく、死んでいたはずの人が生きていた場合の世界だったり。
遠くの世界に行けば行くほど、もどるのも遅くなります。

パラレルシフトした場合は、その世界の自分と入れ替わる。
だからシフトした世界で、自分自身と出逢うことはありません。

そんなパラレルシフトですが、任意の世界にシフトできるほど科学が発展していくのだからこわいこわい。
とまぁざっくりですが、こんな世界観で、『僕愛』『君愛』は描かれます。

■ 『僕愛』『僕が愛したすべての君へ』

主人公の暦が両親の離婚から、母について行き「高崎暦」として生きていくところからスタートする物語。

超優秀な暦は、県内1の進学高校に主席で合格を果たす。
天は二物を与えずというか、なかなか人との関係を気づくのが苦手で、暦には友だちができない。
高校では!と思うも、暦には高校でも友だちができなかった。

そんな中、ある日突然、クラスメイトの瀧川和音に、
「暦」
と、いきなり親しく声をかけられる。
話したこともないのに、いきなりどうして、と動揺を隠しきれないが、訳を聞くと、目の前の「瀧川さん」は、85も離れた並行世界からパラレルシフトしてき「和音」だという。
そしてさらに「和音」の世界では、「暦」は恋人だと・・・。

『僕愛』は、ぐんぐん引き込まれます。
パラレルワールドの怖さを感じつつ、自分に置き換えたりしながらも、どんどん和音のことを愛おしく思ってしまう。

■ 『君愛』とは『君を愛したひとりの僕へ』

今度は暦が両親の離婚から、父について行き「日高暦」として生きていくところからスタートする物語。

少年の頃から父の研究所で過ごしていた暦は、同じように過ごす少女、佐藤栞と出逢う。

2人は、その恋心に気づかぬうちからいつも一緒に過ごし、いつしかお互い、なくてはならない存在になっていた。
それを恋だと認めて、相手に否定されるのがこわい…そんな葛藤をお互いにいだいていただろうとき、急に、親同士の再婚の話を告げられる。

兄妹の関係になってしまえば、結婚できないのでは。
そう考えた2人は、親同士が再婚し得ない世界への逃亡、パラレルシフトを試みるのだが・・・。

栞を思えば思うほど苦しくなります。
また、『僕愛』の知識から和音を思うとまた、なんともいえない気持ちがこみ上げてくる。

■ あなたはどんな気持ちで本を閉じたいですか?

『僕愛』から『君愛』に行った私は、なんとも苦い気持ちで『君愛』を閉じました。

もう自分には知り得ぬ世界ですけど、もしかしたら『君愛』から入っていれば、あたたかい気持ちで『僕愛』を閉じられたかもしれません。

あなたは、どちらから読みますか?