太一(息子・1歳3ヶ月)はなかなか歩こうとしない。
その理由を親は知っている。
なぜなら、太一が言うのだ。
「ここまで培ったハイハイの技術を持ってすれば一瞬で行けるところを、わざわざ二足歩行でヨチヨチ行くことはないだろう。そうは思わないかい、父さん」
目で言う。キラキラした目で言う。
だいたいからして、何もないところでスクワットできるわ、何かを拾い、立ち上がって高いところから放り投げられるわ、やりたいことがあったら歩くよりも高度なことを何度も繰り返すのである。
歩けないわけがない。
彼は効率主義なのだ。
「そんなに歩かせたいのなら、何か歩くことの利点を僕に教えてくれたまえよ、父さん。この僕のハイハイを超える利点をね。」
「ほら、移動しながらシロキチの尻尾をつかめるじゃないか」
「それはハイハイで追いかけて、止まったところをつかめばいいんだよ、父さん。それに二足歩行じゃ追いつけない。」
「…いいよ、もうハイハイで」
彼に歩くことの利点を教えたい。言葉ぬきで。