アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

アイデアホイホイセイレーン

歯ブラシ虫の息

「ぐぎゃぁぁぁ!ぶうぇっ!ぶうぇっ!」 仕事に行く前に響く絶叫。朝のやすらかなひとときを打ち破るこの声は、ディテ(嫁)さんのものだ。いったい何があったのやら。

朝のトラブルとして思い出すのは、洗顔鮮血事件。 石鹸を泡立てることなく、顔に渾身の力でゴシゴシ刷り込むようにして洗顔していたときのこと。 ズボッ! 両小指が鼻孔に激しく挿入された。顔を上げ、鏡を見たとき、白いはずの顔が鮮血で染まっていた。どん引き。白赤なのにサンタでもないし国旗でもない。何よりめでたくない。 石鹸を洗い落としても鼻から血が流れる。その血を小指でとり、目尻から頬に流し、 「イエスの苦悩」 とかやったりしているところを、アフロ母に目撃され、 「!?」 鏡越しに目があったその人は、異形の者を見るような目をして、固まりきったその顔のまま、静か~に去っていった。 こんなこともあった。 洗面所でコンタクトレンズをつけていたときのことだ。どんなに探しても右目のレンズが見つからない。どうしたことだ。流したか?昨日の夜に外したときはあったよな?いったいどこにいった? 今日は知的にメガネでいくか…と、左目のレンズを外した瞬間、 カラン… 左目から二枚のレンズが出てきた。 その日は結局メガネで大学に行くことにした。左目が少し痛かったのと、どっちが左でどっちが右か分からなかったからだ。 そんなことをゆっくり考えながら、 「ど、どうしたぁぁっ!」 せっぱ詰まり、心配して急いで駆けつけたような素振りを見せつつディテさんのいる洗面所にやってきた。彼女はおもいっきり ぐちゅぐちゅぐちゅ、ぶふぁっ! ぐちゅぐちゅぐちゅ、ぶふぁっ! ぐちゅぐちゅぐちゅ、ぶふぁっ! ぐちゅぐちゅぐちゅ、ぶふぁっ! 口をゆすいでいる。 「な、なにが君をそうさせているの?」 もう一度聞くと、 ぐちゅぐちゅぐちゅ、ぶふぁっ! は続けたまま右手を高らかに上げた。その手には洗顔フォーム、ダブが握られている。そしてディテさんは、こうつぶやいた。 「口の中、モイスチャーミルクでいっぱいよ」 洗面台には、歯ブラシが転がっていた。 水道の振動か、口を濯ぐ勢いが激しすぎるのか、歯ブラシはプルプル震えている。 心なしか歯ブラシが自分に重なった。右足首を損傷した瞬間の、うめき声を上げるしかなかった、まさにあのときの自分に。