13日の金曜日はなんで不吉なんだろう。
「ジェーソンの誕生日やからや」
と昔父親が教えてくれたときは、ふーん、なるほどぉと納得していたのだが、
今思えばジェーソンの方が不吉な日に合わせて生まれてきたのではないか、と感じている。
そして、それが正解だろう。
キリスト圏では13が不吉な数字で、食卓が13人だと誰かがこう聞くらしい。
「どなたか妊娠されている方はおりませんか?」
いたら14人だということで落ち着のだという。
こじつけでいいのなら、
「私には死んだ両親がおりまして、心の中で生きております。だから15人です」
とかでもいいんじゃないか?
「あぁ、よかった。ついでに3人前食べて、払ってください。作りすぎましたので」
そんなどうでもいいことを考えていると、妹子が玄関で妙に騒ぎだした。
普段はおとなしい仔で、飯くれ、というときにしか鳴いたりしない。
よく見てみると、風を通す隙間に向かって叫んでいる。
なるほど、と思った。
黒猫がいる。
痩せ細り体中あざだらけの黒猫は、入れてほしいのか面白がっているのか、
中の妹子をぼーっと、しかし深い眼差しで見つめている。
シロキチはというと、内弁慶なたちで、外の猫を極度に恐れているようだ。
妹子は威嚇しに近くまでいくが、そんな二匹を遠くから見守っていた。
高みの見物にしては、びびっているのが丸分かりで、
男のくせに情けない、でも恐いもんは恐いよな、と頭をポンっとたたくと、1mぐらいぴょーんとジャンプして部屋の奥へと逃げていった。
机の椅子に座りながら思うのは、そういえば黒猫も不吉なんだっけ…
「魔女の使いやからな」
と親父が教えてくれた気がするが、ジジが可愛いのでこっちは信じていなかった。