アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

アイデアホイホイセイレーン

ただ、あなたと歩きたかった

歩いていると突然声をかけられた。 「あの善光寺はあっちでしょうか?」 バイクのヘルメットを小脇に抱えたスポーティーな女性が、私の進行方向を指さしている。 スポーティーな女性は小学生の頃からタイプである。 だからというわけではないわけではないが、いつもより三倍増しの丁寧さで応対することにして、 私はこう答えた。 「そうですよ!」 「あ、よかった!」 ツイている。 これでしばらく話しながら歩けるぞ、と思った瞬間、 「ありがとうございました!」 彼女はペコっと頭を下げ、これまたスポーティーなフォームで走り去ってしまったのだ。 私は見惚れた。 ヘルメットをラグビーボールのように抱える細くしなやかな腕、 背負ったリュックを規則正しく揺らす小さくも力強い後ろ姿… 颯爽という言葉は、こういう姿を表すときに使うものかもしれない。 そのとき私は気づいた。 一緒に歩けなかったことなんてどうでもいい。 でも、あなたに伝えたいことがある。 いや、伝えなければいけないことがある。 私は走り出した。 あなたの姿は綺麗です。 私はあなたと並んで歩きたかった。 あなたはとても綺麗で素敵ですけど、 本当は善光寺、真逆なんです。 ただ少し、ほんの少し素敵なあなたと話しながら歩きたかった… こんな私を、許してくれますか?