■ 終極にある異体の散在
この絵は松井冬子さんの作品、「終極にある異体の散在」です。 このリアリティは痛い。 もう見ているだけで痛い。 異体だけに。… 松井冬子さんが身を削る思いで描かれた作品を前にしてこのコメント… 終極を迎えてそうな自分を少し発見し、もげそうな腕ごと筆を置きたくなっております。 それでも終わっている体を振りまきながら走る彼女に感銘を受け、僕も僕なりに真似てみようと思います…無理か。 こんな絵の楽しみ方をしている人間は僕だけでしょうね。 で、異体でも遺体でもなく、本日は幽霊にまつわるお話。 この話は青山俊薫さんから紹介してもらいました。 どうか最後までおつきあいください。
■ 幽霊の特徴
「幽霊を思い浮かべてください」 といわれるとどんな姿をあなたは思い浮かべますか? 「女の人で…
- おどろ髪が後ろに長くひいていて
- 手をだらんと前にたらしていて
- そして、足がない!」
僕もそうです。 子どもに「幽霊やって!」と言われると、チョンと手を前にたらします。 「足はあるけど…幽霊だぞぉぉぉぉぉ」 海外の方はどうかわかりませんが、日本人の心に住み着いている幽霊の姿というのはこの三つの特徴をもっている気がいたします。 そして実は、この特徴にも意味があったんですね。
■ 幽霊の特徴が表すモノ
おどろ髪が後ろに長くひいている姿、これは 「すんでしまったことをいつまでもグズグズ引きずり続けている」 ということを表しています。 後悔、悔い、心残り、残念…過去への執着心でしょう。 二つ目は前にだらんっとたらした手ですが、 「どうしよう…という前のめりになった心」 を表しています。 不安、心配、ネガティブな予想…未来への執着心です。 そして最後、消えてしまった足は何を表しているのか? 「今ここにいない心」 です。
■ 幽霊の教え
ここまで聞いて気づいたことは、 「あぁ、幽霊はわたしだった」。 幽霊は「いないのに いる」「いるのに いない」という存在ですね。 存在というのも変な気がしますが、僕はいるのにいないという状態がよくあります。 「なんであのとき、あんなことをしてしまったんだろう…」 失敗を振り返り、後悔して今にいない。 逆に、 「あぁ、これがうまくいかなかったらどうしよう…」 未来の失敗を予想して、ここにいない。 嫁「でね、そのとき佐藤さんが…」 千「…あぁ…うん…へぇ…」 嫁「ちょっと!聞いてないでしょ!!」 千「聞いてるって!」 嫁「じゃぁ、私の話た二つ前の話題いってみなさいよ!!」 千「えぇぇぇ…」 嫁「ほら!!」 ほらって…いや、これも今ここにいない。 心が過去にとび、未来を旅行していると、今がおろそかになって地に足がなかなかつきません。 心配、不安、今を見ない心は、僕やあなたの存在をあやういものにしてしまいます。
【引用】恥ずかしいのは失敗することではありまえん。 失敗にとらわれ、ひきずり、何もできなくなっているのが「恥ずかしい」ことなのです。 話:青山俊薫
何か戸惑いが見えたときは、 「お、幽霊になってんな」 と少し今の自分に視点をもどしてみませんか。 心を今に向けることを「念」を入れるといいますが、僕も少し念を入れて生きたいと思います。
■ 松井冬子さん
ちなみに、心を過去に未来に振り回す原因の一つが「失敗」だと思うんですが、松井冬子さんは佐藤可士和さんとの対談の中で「失敗に対する恐怖心はありますか?」と聞かれ、こんなことをおっしゃっていました。
【引用】ないですね。失敗しても、それが逆にけがの巧妙になるかもしれない。(中略)窮地に追い込まれながらも、どこかで絶対にうまくいくと思っている自分がいる。だから失敗しても怖くないですね。 【出典】『佐藤可士和×トップランナー31人』P25
終極をまだまだ迎えそうもない松井冬子さん。 終極を通り越し終わりきった幽霊のようなわたくし。 その差はこのコメントにありますね。 個人的に幽霊のモデルなら僕より冬子さんの方が絵になると思っています♪
本日もありがとうございました。