太一(仮名:小三息子)が寝る間際、暗い階段を二階登った瞬間つぶやいた。
「あ・・・」
「どうした?何か忘れもんか?」
寝るのに忘れものも何もあったもんじゃないが、ふと何かを思い出したような「あ」だった。
「うんこが、僕を呼んでる」
たくさんの?が頭に浮かぶ父親を残し、トイレの扉をパタリと閉めた。
変な奴なのだ。
「あ・・・」
オル(仮名:愛妻)さんが太一の社会のテストを見ながらつぶやく。
「凡ミス?」
「いやぁ、どうしてもこの子、『東と西』が覚えられないみたいなのよね」
半笑いで、何の心配も実はしていないだろう様子でぼやいている。
それに反論する太一。
「覚えられないのは『西と東』なんだけど。」
「う〜ん、どうしたら覚えられるかしらね?」
オルさんはツッコまない。こういうツッコまない態度が、太一の太一たる所以、つまり「変さ」を加速させているのではないだろうか。
「川の流れる方向で、『西と東』って覚えられる?」
「・・・どうかなぁ・・・」
無理です。