「どっか行きたいとこある?」
2人は、ほくそ笑むと同時に言った。
「プール!」
■ 季節感皆無
寒い。いや、ぜったい寒い。
季節がおかしい。プールの季節じゃない。
いうても雪国やし。
私関西弁やけど、ここは雪国やし。
温水プールとはいえ、なんかちゃう気がすんねんけどぉぉぉ!
ということで、娘子と息子とプールに行った。
水着に着替えるのがなんとも言えない気持ちにさせてくれる。
「なんかの修行ですかね」
「お父さん、文句言わないよ」
こういうとき、普段の言動でカウンターしてくるのが、子の賢さというか、親の自業自得というか。
■ 黙浴という縛り
入ってしまえば、なんということはないのだ。
温水プールなのでね。
ということで、思いっきり水をかけまくりの遊びである。
ただ、めちゃくちゃ黙浴を決めこんでいるので、無言でかけまくる。
父が無言なら、娘子も無言。なんなら息子も無言なのだ。
大の大人が沈黙して子どもに水をかけに追い回す。
子は、叫ぶこともできずに逃げ惑う。
ホラーでしかない。
なんだこの遊びは、と思っていると、ギブアップ気味に、
「お父さん、泳いできていいよ」
「え?・・・いいの?」
「いいよ、いいよ!」
と、娘息子がいうので泳いでくることにした。
30分・・・久しぶりで逝きそうになる。
■ ドルフィンセラピー…じゃない
フリーコースに移動したとたん、2人が覆い被さってきた。
「お父さん、泳いで。乗るから。」
乗る?!
私はイルカか何かか?
「いやいや、亀かな」
息子よ、、、お前は浦島太郎?娘子は浦島花子なの??
むちゃぶりの中、なんとか泳ごうとするも、2人が乗っかってきてはさすがに浮上できない。
海底を這いずり回る深海魚よろしくなんとか這っていると、水面の方から、
「ひゃっほーい!サーフィンみたいに乗れた!!」
「こら!さわがない!黙ってのりなさい!」
と、息子を叱る娘子の声が聞こえてきた。
父の背中を足蹴にすることに、非難はないようですね。
■ 亀の子は亀
ひとしきり亀役を演じた後、少し休んでいると、スイー、っと男の子が泳いでくる。
そして壁近くになると、クルッとターンをしたのだ。
これぞ、イルカか。
娘子はその格好良さに感動したようで、
「私もやってみる!」
といって、ターンへの挑戦がはじまった。
【ファーストトライヤル】
泳ぎながら壁に近づく・・・そして、
腰を支点に何かボウフラがクネクネする動きをしたと思いきや、
そのままゴール・・・
娘子のキラキラした目がゴーグルの奥で光り、私に問う。
「どうだった?」
「うん。。。溺れてるようにしか見えなかった。」
バシっ
背中をなぐられる。
この手形で、何かの資格証明になればいいのに。
こんなことなら、あのとき甲羅を脱ぐんじゃなかった。
【セカンドトライヤル】
泳ぎながら壁に近づく・・・そして、
立った!!立ったぞ!?
回れ右して、壁から離れながら歩き出した!!
こちらを振り向きざま娘は一言。
「できた!」
「できてねぇぇえよ!」
亀の子は亀・・・いや、亀って海の中ではすげーから、
たかせちゃんの子は、「たかせちゃん」だな。