アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

アイデアホイホイセイレーン

幸せするペルソナ。幸せになれるペルソナ。

『虹』という名曲があります。
菅田将暉さんが歌う曲ですね。

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【引用】大きな夢じゃなくていいよ
自分らしくいれたらいいよ
ひとりぼっち迷った時は
あの頃を思い出して


【出典】『虹』作詞:石崎ひゅーい

息子ちゃん、聴くやいなや間髪入れず、

「あ、さだまさしの曲だ!」

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SUDA MASAKI,
SADA MASASI
ちょっとちゃうね。

【目次】

■ ペルソナ剥がれるとき

何十年も前に読んだ『プリズンホテル』を読み返していて、涙が止まりません。
なんでこのシーンで泣くのか、自分の心に頭が追いつきません。

ロートル巡査が出てきます。ナベ長こと渡辺莞爾は、勤続四十二年ずーっと交番勤め、長い奉職期間中、手柄らしいものは何ひとつ立ててはいない。

でも、このナベ長がめちゃくちゃかっこいいのです。
『プリズンホテル』に出てくる登場人物って、世間の評価は軒並み低いのに、とんでもなくすごいって人がたくさん出てくるんですよね。

そこに感情移入していくのかな。
泣くんです。

でね、ナベ長。ずっと出世しないので、後輩たちや育てた人たちがどんどん出世していく。
鬼松こと松倉警部補もそう。

警察内の対暴力団係?の係長で、見てくれからもうヤクザのそれな鬼松なんですけど、この鬼松に言って聞かせるんですよね。ええ、ナベ長が。

【引用】「見習のころ、おめえは一丁目の交番の前で迷い子になっていたばあさんを、見附の駅までおぶって行ったろう。覚えてるか」
「ああ……覚えてる。暑い日で、ばあさんくたばってたから」
「そんな優しいおまわりが、腕っぷしを見込まれてゲバルトやヤクザ者を相手にするようになった。はっきり言って、おめにゃ向いてねえ。その結果が、女房には逃げられ子供にはグレられ、鬼松なんて二ツ名をつけられた。俺ァはたで見ていて、身を切られるような思いだった。おめえが本当は仏の松だということを、よく知っていたからな」

【出典】集英社e文庫『【合本版】プリズンホテル 夏・秋・冬・春(kindle)』 著:浅田次郎

鬼松に感情移入しちゃって、ボロボロ流れてくるんですよ。
外でがんばるために被ってる仮面。
誰だってあると思うんですよね。

自分じゃない自分にならないとやっていけない。
それで必死で生きていくうちに、本当の自分が分からなくなって、いつのまにか色々なものを失っている。

一番に失っているのは、「自分」なんですけど。

■ ペルソナに助けられることも

ただ、被っている仮面に助けられることだってある。
『プリズンホテル』1巻(夏)から出てくる名物支配人、花沢さん。
2巻(秋)でも、やはり格好よく、、、

【引用】「お客様、おけがはございませんか。あとのことはご心配なさらずに、少しお休みになって下さいませ。お疲れになったでしょう」
ナナは差し出された支配人の手に、すんなりと拳銃を渡した。何だか宿泊客がフロントにキーを渡すような、そんな感じだった
「--あなたは、何で笑っているの?」
ぐったりと肩を落としたまま、ナナはふしぎそうに支配人を見上げた。
客に対する笑顔は、いわばホテルマンの地顔である。だが、それでは答えにはなるまい。
「笑っていなければ、わたくしもこれを撃ってしまいそうですからね。今まで人を殺さずにすんだのは、この笑顔のおかげなのです」
ナナは言葉をかみしめるように支配人の顔を見つめ、それからワッと泣き崩れた。

【出典】集英社e文庫『【合本版】プリズンホテル 夏・秋・冬・春(kindle)』 著:浅田次郎

鬼の仮面を被らなければ生きていけなかった鬼松。
笑顔でいることで、人を恨めど殺さずにいられた花沢支配人。

どちらも滅私であるはずなのに、何か違う気がするのだけど、なんなのだろう。

■ 被っているペルソナは誰のため?

花沢支配人の被る仮面は、人を殺さないだけではなく、誰かを幸せにしているのですよね。

プリズンホテルのオーナー仲蔵親分は、花沢に語ります。

【引用】「わたくしには何もできません。ごらんの通り、このトラブルひとつにしたところで……」
「いいや、おめえは人を幸せにする」
仲蔵親分は相変わらず人形の首をすげながら、意味がわからずに佇む支配人に向かって、もう一度言った。
「わからねえのか?あたりめえのホテルマンのできることは、せいぜい一泊二日の幸せだ。だが、花沢。おめえは人の一生を幸せにする」
支配人の腕の中で、しなだれかかる柏木ナナの体が重みを増した。

【出典】集英社e文庫『【合本版】プリズンホテル 夏・秋・冬・春(kindle)』 著:浅田次郎

鬼松が被った鬼のお面は、誰を幸せにしたのでしょう。
きっと、回り回ってたくさんの人を幸せにしたと思うのです。

でも鬼松さん自身のことは?

花沢さんはどうなんでしょう。
クラウンホテルでは冷遇されど、誇りを持ってホテルマンをしていた花沢さんは、周りの評価とは関係なく、自分も幸せにできていたのではないかな、と思うのです。

自分をただただ滅し奉公するのも、滅私といえど自分をも幸せにしつつ奉公するのも、同じようで紙一重。
紙一重で全然違う。

そう、思いたいんだよな。

大きな夢なんて叶えなくてもいいんですよね。
自分らしくいることって難しく、見失っちゃうのですが、
もし独り、自分のことが分からなくなったら、
仮面など被らぬ頃の自分に思いを馳せてみるのもいいのかもしれませんね。

子どもの頃の自分。

■ 幸せするペルソナ。幸せになれるペルソナ。参考文献

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