アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

アイデアホイホイセイレーン

抜けない視線

【引用】子どもが生まれたらーお父さんにできること (4)夜泣きをあやす 「おぎゃー、ほぎゃー」 「夜中のドライブにでも行くか… …あれ、もう寝た?」 【出典】1万年堂出版『忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス』P47 著:明橋大二

■ 3歳、ゆびしゃぶり依存症

「3歳になったら、ゆびチューチューやめようね?」 というディテ(嫁)さんの言葉に、 「うん♪おねえさんだもん!」 と答えたいろは(娘・3歳なりたて)。 「言うはやすし」という言葉。どうも、大人も子どもも同じく超えがたいようだ。 「ふぇぇぇぇぇん!ゆび、しゃぶりたぁぁぁい!」 娘の苦しみは、母の苦しみ。 「そうだよね、ちゅーちゅーしたいよね。」 「ゆび、ちゅーちゅーさせてぇぇぇぇぇ!」 「よし、お母さんとお手てつないでねんねしよ」 「ゆび!ゆび!ゆびぃぃぃぃぃぃ」 私がアルコール依存症になったら、ディテさんは手伝ってくれるのだろうか…という疑問がわき、のどのここらへんまで出かかっていたところを、あわてて肛門の方まで押し込んだ。 返答が怖すぎる。 指をしゃぶらず寝るようになったせいか、我慢に疲れ切って寝るせいかわからないが、いろはの寝相はよくなり、朝までぐっすり眠ることが増えてきた。 が、この日はちがった。

■ ベビー級夜泣き、3歳でヘビー級

時計が23時をまわったところだ。 寝室から絶叫が聞こえてきた。 「ふびゃぁぁぁぁあ!おかあさぁぁぁぁん!」 初めて太一(息子・1歳なりたて)が「お母さん」って呼んだ♪…わけはなく、叫びの主はいろはであった。 「おかあさん!おかあさん!おかあさぁぁぁあぁん!」 急いで寝室に向かうディテさんの後ろを、1秒も呼ばれず求められずの父(私)もついていく。 「だっこしてぇ!だっこしてぇぇぇ!だっこしてぇぇ!!」 「はいよはいよぉ~どうしたどうしたぁ」 やさしくディテさんがあやすも、叫びはヒートアップ。 音量マックスで寝室をこだまする咆哮は、もう一匹の小さい巨人を呼び覚ました。 「ふぁ…あああああああああん」 起き抜け早々マックスで夜泣きをとばす太一は、さすが現役、とうなるほかあるまい。 さすがに両方から 「呼ばれもせず、求められもせず、雨にもまけず、風にも負けず、そんな人に、わたしはなりたい」 とは言っていられない。 「だっこしてぇぇぇ!ねれれない!ねれれないよぉ!」 「いろは、お父さんとドライブいくか?」 「うん、いく」 …はや…切り替え速すぎやろ。 そして娘と夜のデートに向かうことになったのである。

■ ラブドライブ

「シート倒して、シートベルトして♪寒くない?タオルまきまきにしよう…音楽は、ねんねの曲、聞いていこうね♪♪」 「うん♪」 万全の寝させ環境を整え、ゆっくり車を滑らせる。 深夜、あまり信号にもつかまらず、ドライブは快適。 私の知識では、そろそろ「あら、もう寝たのかい」の一言を発するはずなのである。 ちらっと横目で助手席の彼女を見ると、ギロっと私をにらんできた。 心を射抜かれると思いきや、すぐクリクリの目をかがやかせ、ニコっと微笑んできた。 こ…このやさしさは… 「おとうさん♪まっくらのドライブ、たのしいね♪♪ライトちゃんとつけてる?」 まったく寝る気配がない。 「いろは…もう寝なさい」 『耳をすませば』雫のお父さんバリにやさしい声がけをしても、 「でんきがどんどんながれてくぅ!」 完全に覚醒しているのである。 眠いときは悪魔のはずなのだ。天使的対応のいろはを見ても、どれほど眠気がふっとんでいるかをうかがえる。 流れるBGMは子守歌…運転しているこっちが逝ってしまいそうだ。 たまらず大きな駐車場に停め、だっこで散歩をする。

■ 読み聞かせ、4本

どうして私はここにいるのだろう…。 パジャマの娘を抱き、こうこうと光る蛍光灯の下に私は立っている。 ここは蔦屋書店。 「ほんやさん、ひかってるよ!いってみよ!」 2分前、いろはの言葉に逆らえず入店。 夜は淡い光になんで変えてくれないんだ!というのは無理な苦情であろう。 「こどものほんのとこ、いこっ!」 「…うん…」 もうヤケである。 「これよんで♪」 「はいよ」 「これもよんで♪♪」 「はいよ」 「つぎ、これよんで♪♪♪」 「はいはい」 「これっ!」 「はぁい」 計4冊の読み聞かせをへて、 「ねぇ、もうかえりたい…おとうさん、かえろ?」 私が無理矢理つれてきたみたいじゃないか。 そんな風にみられてるよ、店員さんに。 ひどいよ。 そして家に帰る。

■ 最後のお願い

キーッ。プスン。 時計は24時をとっくにまわっている。明日だ。明日になった。 家につき、助手席に横たわる彼女に私は提案した。 「ねぇ、とりあえず寝てるフリしてくれへん?」 「いいよ。」 「こんなに夜連れ回して、まだ寝てないってなると、お父さんの立場が危ういからさ。寝てるフリして、そのまま寝室にいってくれへん?」 「いいよ。」 「お願いね。」 「いいよ。」 バタン。 いろはをお姫様だっこして、部屋に向かう。 固く目をつぶるいろは。上手だ。 きた。第一関門。というか最終関門。 「あ?ねてる?」 小さくつぶやくような声でディテさんが聞いてくる。 起こさないように、と表情だけで伝えながら、首だけで肯定する私。 が、 「おきてるよぉぉ♪」 めっちゃさわやかにドッキリ発言するいろは。 求めてなかった。お父さんそれ、まったく求めてなかったよ?いろは。 「そっかぁ♪じゃあ、これからお母さんと寝ようね。はじめっから。」 いろはと寝室に消えていったディテさんは、目が笑っていなかった。 あぁ、明日参観日の授業どうしよう…未来にあわてて現実逃避するも、無数に刺さるディテさんの視線が、なかなか抜けない。 「土曜参観だからお母さんたちいっぱいくるんだよなぁ」 なかなか、抜けない…。