マクドで黙々と勉強していた。 すると突然、 「ビッグマックをお一つで」 僕は度肝をぬかれ右をバッと向いたのだけれど、 大きなゴミ袋を持った店員さんはそのまま 「お会計は…」 とか言いながらレジの向こうへと消えていってしまった。 練習?… しているわけではないらしい。 コーヒーのお代わりついでに、同じ店員さんにシェイクを注文する機会があった。 小さいヒソヒソ声で (バニラ味とストロベリー、チョコがございますが?) と言うもんだから、つられて自分まで (ストロベリー) とヒソヒソ答えてしまった。 するとマイクを下ろし、 「はい、ポテトLサイズ…以上で…お会計は…お車を前にお進めしてお待ちください」 マイクを上げ (お会計は百円になります) ドライブスルーの接客であった。 ここのマクドではドライブスルーの注文をとる人と商品を渡す人が違うらしい。 とはいえ車の向こうのお客さんは、こっちがゴミ袋運びながらやら、 他の客の注文をとりながらやら、 こんなにもてんやわんややっているなんて気づきもしないのだと思う。 会社の電話番をしていたことがある。 隣の先輩が受話器を取った。 なんだか知らないが、どうも苦情のようで、 「上に…判る者に回させていただいてもよろしいでしょうか?」といっている。 が、どうもなかなか回せていない。 「お前がしっかり伝えろ」とでも言われたのか? 先輩は雑誌の編集校正を赤で入れながら、鼻をほりほりしつつ、 「いえ、そういう貴重なご意見をいただけることを嬉しく思います」 なんて言っているのだ。 しかもメモまでとっている。 いったい何本手がついているのか? 勉強熱心な後輩は、先輩の横顔を尊敬の眼差しで見つめていた。 「はい…はい。本当に貴重なご意見ありがとうございました。編集長、制作部のリーダーには私から責任を持って伝えさせていただきますの…はい…はい…ありがとうございました。それでは失礼いたします。」 ツーッツーッ ガチャン 「ふーっ、はい」 「えっ?」 なんとメモが僕に回ってきた。 いつのまにか編集長兼制作部リーダーになっていたらしい。 メモられていたことは、 「英語の使い方がおかしいとのこと…デザインカッコ良くしたいからって英語使うんは判るがうんたらかんたら… ってハゲやろ?お前ぜったいハゲや…こだわりすぎやねん大ハゲっ 何?ネイティブなん?ネイティブハゲなん? このネイハゲっ ハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲ×100000」 ご丁寧にハゲオヤジ(波平っぽい)の挿し絵まで入っていた。 まさか苦情主も、ここまでハゲのシャワーを浴びているなんて思ってもいまい。 それからかもしれない、僕が電話を怖がるようになったのは。 対面していないコミュニケーションほど怖いモノはない。 相手は失恋の相談を受けながら、 ズズズ 「つらかったね…私も、ズッ、泣けてきちゃった」 ラーメン喰ってるかもしれんのだ。 あぁ怖い怖い。
電話とるとき気をつけんとね いつから電話に出れるようになったのよ? まったく… それよりあんた、 うんこしてたじゃない そ、そうなの!? めでたいじゃないか! おかげさまで 固い綱のようなものを 産むことができました ご心配をおかけして… あんた、タオル食べ過ぎなのよ 好物なの?タオル好物なのか? おもらしガールに言われたないわ ぽっ ありがとう ほ、ほめてへんほめてへん