アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

アイデアホイホイセイレーン

団地妻の妹子、断末魔の妹子

病院にて探索中の妹子

妹子の異変にはすぐ気が付いた。 一日家を空け「ただいま」と帰ったとき、久しぶりに会う妹の歩き方がおかしい。 妙に不自然で、左後ろ足と地面の接触時間が他の足とくらべると異様に短いのだ。異常といってもいい。いわなくてもいい。 いつもなら、 ひょこっ、ひょこっ、ひょこっ、といった感じなのに、 ひょこっ、ひょこっ、ヒッ、ひょこっ、といった按配だ。 その一歩と一緒に妹子の悲鳴が聞こえてくるようである。 しばらくしたら治るだろと思いつつも、もしもこのまま一生妹子がこんな歩き方だったら…いや、それはそれで可愛い気がしないでもない、うーん。 結局病院に連れて行くことにした。 そういえば、妹子を医者に診せるのはアレぶりである。 妹子は以前一度だけ散髪をしたことがある。カットといってもいい。いわなくてもいい。 チンチラ種(らしい)妹子は毛が非常に長い。 長いだけなら私は気にもならないが、いささか伸びすぎたようだ。 毛玉ができるようになった。 毛玉ができるくらいなら私は気にもならないが、妹子は違うらしい。 掻くのである。激しく掻くのである。 どこかで毛玉の原因は静電気と聞いたことがあったが、それが正しいのなら妹子は自分が掻くことにより静電気を発生させ、自ら毛玉を育てあげていることになる。 バカだ。 毛玉が育ったものを私は「毛玉お化け」と呼んでいる。 初めてお化けと出遭ったとき、まさかこいつが毛玉の進化形だとは思いもよらなかった。 腫瘍というか、肉片というか、それはそれは固いフェルト絨毯の塊が、妹子の体から茶色いトマトのように生えているのだ。 世にもおぞましい。 毛玉と気づいたからには「切除します」と息巻いてハサミにカッターにバリカンに、文明の利器を全て駆使して戦ったが、ほんと文字通り歯が立たなかった。 しょうがない、と毛玉お化けを放置することにした。 毛玉お化けは、それがノミの温床となっているのかやっぱり痒いらしく、妹子は掻きに掻きまくり、さらに静電気でお化けを肥大化させ、挙げ句の果てに身体の自由を制限されるほどの大きさにしてしまった。 そこにノミが一日一日育っているかと思うと、もう見ているこっちまで痒くなってくる。 しょうがない、医者に行くことにした。 「あぁ、これは痒いでしょう」と医者様。 夏も来るので今のうちにカットしておかないとマスマス痒くなっちゃいますよ、とおっしゃるので二つ返事で「お願いします、やっちゃってください」 とお頼みした。 「ライオネルカットでいいですかね?」 猫のカットごときに名前があるのか?と感心し、坊ちゃん刈りとかワカメちゃんカットとかはないのかなと考えながらも、医者様は美容師ではないのだからそんなトリッキーなことも頼めまい、 これまた二つ返事で「ライオネルカットでお願いします」とお頼みした。 カットの日取りを決め、いよいよその日が来た。 Xデーの朝。何も知らない妹子は、もともとグウタラの上に、体の動きを制限されてと、いつもどおりソファーの上でへばっていた。 これがBeforeである。 妹子カット前 そして夕方。迎えに行ったとき、妹子とは違う、確かに違う生物がそこにいた。 「ライオネルカットしたらさっぱりしちゃってぇ、本当に気持ちよさそう」 気持ち機敏になっているこの生物は、本当に妹子なのか。 カットに失敗して殺してしまい、違う動物を妹子と言い張っているのではないか。 「これが刈った毛です」 とジャスコの買い物袋いっぱいになった妹子の毛を見せられ、 うん、確かに毛の匂いが妹子のそれである、とこの仔を我が妹だと信じることにした。 ライオネルカット、恐るべし、である。 トリッキーさでいえば、ぼっちゃん刈り、ワカメちゃんカットの比ではないだろう。 医者様の発想、恐るべし、である。 家に連れてかえり、私は妹子に語りかけた。 「妹子、ほんとに妹子なの?おばあちゃんみたいに・・・ってかETやん。」 そのとき映したのがこの写真。 これがAfterである。 妹子カット後 シロキチはシロキチで、新しいモノが来たかのように自分の妹を威嚇している。 わかる、わかるよシロキチ。 横から見た姿がこれまた異様だ。 妹子カット後横 そんなことを思い出しながら、同じ医者様の所へ妹子を連れて行った。 助手の方が体を押さえ、医者様は左手で妹子の左後足をつかみ、右手で妹子の指を一本一本ゆっくりとつまんでいった。 最後の指をつかんだとき、 「グギァー!!!シィーーーーーー!」 断末魔の叫びと、威嚇の声を私が発した、のかと思ったが、妹子が発した。 「どうやら指をひねってますね。」 指ひねってる、私がいないときにどんなアクロバティックなことをしていたのだろう。 注射を一本打たれるときに、断末魔をもう一度あげて、病院を後にした。 帰りに運良く?般若か、鬼か、凄まじい形相で独り歩く中村女史に遭遇した。 「一緒に帰る人いないからしょげてたの」 どうやら帰る友達がいなかったらしい。 中村女史は妹子の名付け親の一人である。 「ほんとは、まくってたワイシャツの袖を日焼けすると思って戻したら劇的にシワがよってたからなの」 どっちにしろ鬼の面をかぶるほどのことか?というツッコミはあえて避け(彼女は三倍返しがモットーだ。鬼の金棒がこっちに向きかねない)妹子の話をした。 「いぬって指とか捻挫するんだ!?あの短い指でどーしたら捻挫するの?」 猫だけどね・・・というツッコミはあえて避け(彼女のモットーは三倍返しだ。妹子ではなく私がイヌにされかれない)、妙に納得をした。 妹子、家にこもりっきり団地妻のお前が、ほんとにそんな短い指、どうやって捻ったんだ?といい、断末魔のスイッチをちょんと押してみた。 「シィーーー」と威嚇されながら、ごめんごめんと頭を撫でてやった。 ● 最後までお読みいただき、ありがとうございました。次は私にカットさせて!という方、